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最高裁判所第三小法廷 昭和39年(オ)705号 判決

上告人 名古屋三菱自動車販売株式会社(旧商号名古屋中重自動車株式会社)

右訴訟代理人弁護士 朽名幸雄

被上告人 中西政雄

右訴訟代理人弁護士 補永守

主文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人朽名幸雄の上告理由第一、二点について

原判決は、上告人(被控訴人)が被上告人(控訴人)に対しCL10型シルバービジョン一三台を売り渡した事実、右一三台のうち、車台番号三四五五号、三四六三号の二台を除く一一台については、その代金が支払いずみである事実を確定し、乙第二号証および原審における控訴人本人の供述により、右二台の代金も昭和三六年三月一一日現金五万九〇〇〇円、手数料金三万九〇〇〇円および手形金額合計一三万九〇〇〇円の約束手形の交付により決済された事実を認定したうえ、結局、上告人が被上告人に売り渡した前記車輛一三台の代金は全部支払いずみであるとし、その代金の支払いのため振り出された本件約束手形は原因関係を欠くものであるとして、上告人の本訴請求を棄却している。しかし、原審が成立を認めた甲第八号証には、前記二台の車輛を売り渡した期日は同年五月八日、その代金は一台について七万八〇〇〇円と記載されており、同じく成立を認めた甲第一三号証には、同年三月一五日被上告人が上告人に対し右二台の車輛とは別の三台の車輛の代金として前記現金五万九〇〇〇円等を交付したのである旨記載されていることは、記録上明らかである。すなわち、原審は甲第八、一三号証の記載に反する事実を他の証拠により認定しているのであるが、このような認定は、右各書証の記載が真実に反することについて首肯するに足りる理由を説示し、これを排斥したうえでなければ、許されないというべきである。しかるに、原判決は、なんらこのような措置をとることなく、漫然前記の証拠により前記の事実を認定しているのであって、審理不尽、理由不備の違法を犯したものというほかなく、この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は到底破棄を免れない。〈以下省略〉

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎)

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